貼雑帖(はりまぜちょう)

アクセスカウンタ

help RSS 映画 『赤い手のグッピー』 を観て。

<<   作成日時 : 2007/07/31 23:54   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

ピエール・ヴェリイと言えば、パズラーの佳作『サンタクロース殺人事件』や、ヘンテコな密室もの『ガラスの蛇』で知られている作家です。

そのヴェリイの原作で、脚本も本人が担当したという映画『赤い手のグッピー』については、タイトルのみ知っていましたが、これまで観る機会がありませんでした(いちおう、DVDは出ているようですが)。しかし、『女警部ジュリー・レスコー』など、なぜかフランスものを取り上げることが多いミステリチャンネルが、フランスの古いミステリ映画をまとめて放送してくれた中にこの映画があり、今月やっと観ることができました。

1944年制作ということで、これは“史上最大の”ノルマンディー上陸作戦の年です。でもフランスの大部分はまだドイツ占領下にあったはず。そんな時期に、こういう映画を作れたのが不思議です。これもフランスの映画人気質を表しているんでしょうか。監督はジャック・ベッケル。トリュフォーが敬愛していたヌーヴェルヴァーグの人で、代表作はジャン・ギャバン主演の『現金(げんなま)に手を出すな』。『怪盗ルパン』とかジョゼ・ジョバンニ原作の『穴』の監督でもありますから、ミステリ系・ノワール系が得意だったんでしょう。

で、観た感想なんですが……うーん。なんと言えばいいのでしょうか。ピエール・ヴェリイの作風って、ジュヴナイルすれすれのファンタジーと、ユーモア系本格パズラーが混ざったような独特な路線なんですが、この『赤い手のグッピー』はちょっとそこから外れているようです。当然ながら画面はモノクロ、お世辞にも画質が良いとは言えないですし、開始してからしばらくは夜のシーンが多く、かつ舞台がド田舎なので、古い吸血鬼映画でも観てるようなムードでした。

顔見知りの俳優は2人ぐらいしかいないし、音声の質も良くないため、字幕に視線を走らせていると誰がしゃべったのかすらわからなくなったりして、最初のうちは録画を何度も見直したりしました。だいたい、登場人物が多い上に人間関係も複雑なので、もしこれを劇場で観たら、こんがらがること請け合いです。

物語は、グッピー家という四世代同居の一家と、その親類であるグッピー一族が住んでいる田舎の集落に、グッピー家の当主の息子が、25年ぶりにパリから帰ってくるところから始まります。グッピー一族の男たちはみんな、妙なあだ名で互いを呼び合っていて、当主は“けちんぼ”、その父が“法律”、長老格の106歳の老人が“エンペラー”という具合。タイトルにある“赤い手”は“けちんぼ”の弟で、猟師をしているレオポールのあだ名です。“けちんぼ”の息子は“ムッシュー”というあだ名ですが、小さい頃、夫に愛想を尽かしてパリへ出て行った母親に育てられたため、この村のことは何も知りません。

さて、グッピー家には先祖代々に伝わっている財宝があるのですが、その隠し場所は“エンペラー”しか知りません。そして“エンペラー”は高齢のため、ちょっとボケ気味ですが、財宝のありかはまだ誰にも教えていませんでした。もともとグッピー一族は、その財宝の秘密を守るために近親間での結婚を繰り返していて、このたび“ムッシュー”が呼び戻されたのも、いとこにあたる娘ミュゲと結婚させようという、“けちんぼ”の意図によるものでした。

そんなこととは知らない“ムッシュー”が、村から12キロも離れた駅に列車で到着した夜、“赤い手”が馬車で迎えに来ていました。2人は会話を交わしながら村に向かうのですが、その途中、なぜか“赤い手”はこっそり馬車のブレーキを締め、「車軸にものが挟まった」とか言って“ムッシュー”を降ろしてしまいます。そして近くにある自分の小屋に誘いますが、そこはコウモリやいろんな動物の剥製が並んでいたり、奇妙な人形があったりする不気味なところ。パリ育ちの“ムッシュー”はすっかりビビッてしまいます。

“赤い手”は自分の恋人だった娘が身投げしたという古井戸に“ムッシュー”を連れて行き、さんざん怖がらせたあげく、「悪魔と待ち合わせだ」と言って森へ出かけてしまいます。“ムッシュー”が小屋に戻ってみると、そこにはマントを着た怪人物がいて、驚いた“ムッシュー”は闇雲に逃げ出します。実はこの怪人物もグッピー一族の男“トンカン”で、“赤い手”と示し合わせて“ムッシュー”を威かしていたのでした。

いっぽう、グッピー家では、「“ムッシュー”はまだか」と待っているうちに夜が更けてしまいます。そんな中、“エンペラー”はこっそりと、“けちんぼ”の妻チザンが隠していた1万フランの金を取り出して、1人ニンマリしていたのですが、ワインの酔いが回って、その場に倒れてしまいます。そこにやってきたのが、自転車でいち早く村に戻っていた“トンカン”。彼は“エンペラー”の握っていた金をネコババして忍び出ようとしますが、チザンに見つかりそうになり、森へと逃げ出します。

“ムッシュー”のほうはようやく自力で村までたどり着くのですが、人っ子1人おらず、なんとか家に入り込んでみると、そこには“エンペラー”が死んだように倒れており、またもや肝をつぶして、森へと逃げ出します。その夜もようやく明け、グッピー家の人々が“ムッシュー”を探しに森へ行ってみると、そこには殴り殺されたチザンの死体が。そして、全ての疑いは“ムッシュー”にかかってしまうのでした。

……と、まるで横溝正史のようなシチュエーションで話が進んでいきます。また、エキセントリックな登場人物ばかりで、金銭欲に駆られてメチャクチャな行動をとったりするので、真相が見えにくくなっていますが、プロットそのものはわりと単純です。ホラー調の前半部を過ぎると、“ムッシュー”とミュゲのロマンスが絡んできたりしてムードも一変し、妙なユーモアも漂いはじめます。最後は、非常に意外な人物が探偵役となって結末を迎えます。

謎解き、というほどのものではありませんが、いちおう本格もののようなスタイルにはなっています。こんなに変な一族で殺人が起きるという話でありながら、なぜか最後はめでたしめでたしみたいな終わり方なので、観てるほうは「なんなんだこりゃ」な気分になってしまうのですが、ではどこがどう不自然なのかと言われると困ってしまう。つまり、これはこれで一種のリアリズム表現なのかなあ、という奇妙な映画でした。

テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
映画 『赤い手のグッピー』 を観て。 貼雑帖(はりまぜちょう)/BIGLOBEウェブリブログ
[ ]