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help RSS ゴルゴ13 第145巻 を読んで。

<<   作成日時 : 2007/08/03 23:51   >>

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この稿を書く前に、まず“ゴルゴ13”というテーマのカテゴリを検索してみたんですが、意外なことにウェブリブログ内にはありませんでした。

まあ、ゴルゴの読者層というのは、一般的なコミックファンの平均値よりは年齢が高いだろうと想像されますから、こういう空間を利用する層とあまり重ならないのかもしれません。それと、ゴルゴシリーズ自体、ひとつひとつのエピソードは論評しにくいようなムードもあります。単行本が現在145巻もあるとはいえ、クロニクルでもなければ大河シリーズというわけでもないので、パッと目についた1冊を手にとって読み始めても、何の問題もないはずなんですが……。

ゴルゴ13という作品群には、いくつかのお約束があります。このシリーズが、だいたいどんなものか程度はご存じでも、このお約束の部分までは知らない、という方もいらっしゃると思いますので、ちょっとお節介ですがいくつか書いてみます。まず「ゴルゴ13は、国籍・人種不明で、本名もわからない」。彼はデューク東郷という名をよく使いますが、それが本名だという記述はどこにもありません。日本人の血が入っていることは間違いないと思われますが、これも確実に証明されたわけではありません。実際、ゴルゴの正体(出自)を探る、というのがテーマのエピソードが10本ぐらいありますが、いずれも不明のまま終わります。

次、「ゴルゴ13は、年をとらない」。まあ、これはサザエさんも金田一少年もみんな同じですが、ゴルゴの場合、国際情勢が絡んだエピソードが数多くあるので、明確に不老がわかってしまいます。だって彼は、ケネディ暗殺事件の現場近くにいたときも、レーガン、クリントン、ブッシュ(と思われる米大統領)……などと同時に出演したときも、外見がほとんど変わってないんですから。

そして、「ゴルゴ13は、女にもてる」。最近のエピソードには、ベッドシーンがほとんど登場しなくなってしまいましたが、ゴルゴはやたらと女に惚れられます。機密資料の中のゴルゴのファイルを読んだだけで、彼に惚れてしまうCIAの職員もいたほど。ついでに言うと、彼は百戦錬磨の娼婦や、不感症の女スパイでもエクスタシーに追い込んでしまうほどのテクニシャンです。

それから、「ゴルゴ13は、失敗しない」。彼は狙撃者であり、彼の仕事は誰が見ても不可能なスナイプ。そこにわずかな可能性を見いだしてしまう推理力と、それを可能にする超人性を兼ね備えているのがゴルゴなのです。彼が狙撃に失敗したのは2度だけ。最初のは暗殺者の心を読んでしまうテレパスと対決したとき(でも結局、任務には成功しますが)。もう一つは、彼の買った銃弾の中に、出来心で一発だけわざと不発弾を混ぜた武器屋がいたため。この時は、不発の原因を突き止めるまで仕事を中断しています。

あと、「ゴルゴ13には、持病がある」。右手が突然しびれて、ものが持てなくなるという、狙撃者としては致命的な発作が、年に一度程度、突発的に起きることが知られています。この持病をギランバレー症候群だと書いてある資料もありますが、それは間違いで、原因は不明です。なぜなら、どうやらゴルゴの場合、「女を抱くとしびれが治る」らしいからなのです。

このほかにも、「ゴルゴ13は、特定の思想や信条、宗教といったものに与しない」とか「ゴルゴ13は、裏切った者・約束を守らなかった者・嘘をついた者を確実に殺す」とか「ゴルゴ13の医学知識は、本職の医者以上である」とか、「最近のゴルゴは、ほとんどしゃべらない」など、いろいろお約束はありますが、それらはしょっちゅうエピソードの中で触れられることですので、わざわざ書き出す必要はないでしょう。とにかく、これらを知った上で読めば、これまでより楽しめることは請け合いです。

さて、以上のような約束事と、ゴルゴ独自のルールが成立している世界観の中で、彼が遂行する任務の多くは、ある意味不可能犯罪に近いものがあります。犯罪が絡まないエピソードもありますし、単なるアクション篇であることも珍しくはないのですが、それらは少数派で、ゴルゴは非常にクレヴァーな仕事をします。それを取り出してみれば、劇画とはいえ充分にミステリとして通用するケースが多いと思うのです。単行本最新刊にも、そういうエピソードが含まれていますので、ミステリファン向けの解説をば少し。

第145巻 『ヨハネ伝第十一章十節』 収録エピソード・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『ヨハネ伝第十一章十節』
難民孤児を保護して養育し、社会適応させる国際組織、インター・チルドレン財団。その研修所の近くに住む車椅子の鳥類学者ロリンダは、一日中、鳥を観察するかたわら、施設に入っていく車の乗員を、何の気なしにカウントしていた。しかしある時、入っていった子供の数に比べ、出てくる子供の数があまりに少ないことに気付く。その裏に隠された陰謀とは……。誰かの依頼があって、それを引き受け、任務を遂行するゴルゴ。最もよくあるパターンのエピソードです。

『容疑者トウゴウ』
忌まわしい圧政者であった某国の元大統領を、再びかつぎ出そうという動きが。スイスの山中に潜伏中の元大統領を暗殺するという任務を引き受けたゴルゴだったが、狙撃した直後に偶然、雪崩に巻き込まれて傷を負い、銃も失ってしまう。ところが、ゴルゴが泊まっていたホテル内で殺人事件が起き、ゴルゴは容疑者として疑われ……。雪に降り込められたホテルが舞台の、一種のクローズドサークルものと言える作品です。若干のフーダニット興味もあります。

『殺人劇の夜』
対立する2人の不動産業者。10年前、ダウンタウン再開発の大プロジェクトをめぐって、どちらが受注するかは競馬のレース結果に賭けられた。勝った男は不動産王と呼ばれるまでになり、負けた男との差は大きく開いた。が、10年前のレースに八百長があったことが判明、その恨みを晴らすべく、ゴルゴが暗殺を依頼される。芝居見物が趣味の不動産王を殺すチャンスは劇場にしかないが、彼はその劇場を貸し切りにして厳重に警備しており、武器の持ち込みはもちろんできない。どうやって暗殺するのか……。これは、「凶器の持ち込みも持ち出しもできない現場で、いかにしてゴルゴは相手を射殺できたのか」という謎を中心に据えた物語。極めてトリッキーな作品で、エドワード・D・ホックもかくや、というような不可能犯罪ものです。

『ストレンジャー』
継母に反発して家出した少年ボビーは、死ぬつもりで想い出のある山に1人でやってきた。ところが、その山にはゴルゴが逃げ込んでいた。狙撃を終えたあと、無関係の強盗事件に巻き込まれ、検問に引っかかってしまったのだ。やがて大規模な山狩りが始まり、追っ手をかわすゴルゴを見つけたボビーは、興味を惹かれてそのあとを追うが、山火事が起こってしまい……。ゴルゴのエピソードには、他者の視点からゴルゴを描いたものも多いですが、これもそういう小品のひとつ。山火事に巻き込まれたゴルゴが、どうやって生き延びられたのか、という部分が、特に面白く書かれています。
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以上、4篇からなる短編集という体裁(これは、ゴルゴの単行本ではもっとも普通のパターンです。1冊を通してひとつの長編エピソードになっている場合もありますし、複数巻にまたがっているケースもなくはないですが、それはむしろ例外です)で、この巻の場合、完全にミステリとして扱えるのが『容疑者トウゴウ』と『殺人劇の夜』の2篇。特に後者は、不可能犯罪ファンなら目を通して欲しい逸品?です。

※この記事はブログ村 ミステリー・推理小説にエントリーしています。

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