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help RSS ミステリマガジン 2007年11月号

<<   作成日時 : 2007/09/28 23:53   >>

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11月号の特集は、「ここはミステリ・レストラン」。どうしても、色とりどりのフルコースのような短編競演を思い描いてしまいますが……。

前号までで、チャンドラーの新訳シリーズがようやく終了したのですが、代わりに岡野薫子の読み切り短編『都会の蜃気楼』が載っているので、特集に割かれたページ分量は大して変わっていません。しかも、特集に組み込まれた3作品のうち、ひとつはミステリですらないし……。そのほか、例によってコラムが2本、坂田靖子の漫画、そして愚にもつかないモンティ・パイソンの下品なパロディが1ページ。あと、「対決 隣のミステリ作家ごはん」と題した、飯野文彦と霞流一の対談(レシピ付き)。

目次には短編という括りに、3本のタイトルが並んでいるのですが、これはインチキでしょう。というのも、最初の『ニューイヤーズ・ツナ』というのは、「トラ猫ミセス・マーフィー」シリーズの著者ならぬ著猫、スキーニー・バイ・ブラウンが書いたという拵えのもので、レシピ付き身の上話みたいな内容。分量はわずか3ページです。レシピといっても猫用なので、人間が食べる料理じゃありません。まあ、飼い猫がいる読者には参考になるのかも知れませんが……。

短編ふたつ目は、P・G・ウッドハウスの『ジーヴス、オムレツを作る』。おなじみ万能執事のジーヴス譚です。翻訳は、国書刊行会が出しているジーヴス・シリーズの訳を担当している森村たまきさんによるものなので、その意味では違和感はありません。しかし、これを料理の話というのは相当に強引。ウースターが叔母さんに頼まれて、プロ気取りの素人が描いた酷い絵を盗み出し、密かに焼いてしまおうとする、というようなストーリーで、このシリーズの中では水準以下の出来だと思います。

短編コーナーの最後は、初めて読むローラ・ウィルスンというイギリス作家による、『冷たくして召し上がれ』。4ページほどの、ほとんどショート・ショートのような作品です。戦時中、風邪の研究に協力してくれる兵士求む、という張り紙に騙され、毒ガス兵器の人体実験を受けて死んでしまった夫の恨みを、長年持ち続けている女が語り手。彼女はパーティ用のケータリング会社でアルバイトしているのですが、たまたま仇と目指す博士の家に呼ばれることになり……というような内容。ミステリというより、軽いサイコホラーです。

坂田靖子の漫画は『月曜日にはパイを』という題名で、「幽霊執事2」というサブタイトルが付いています。なぜ“2”なのかと言えば、5月号に載った『シノワズリ』という、同じ主人公の作品の続編だからです。そのへん、何の説明もないので、5月号を読んでいない読者は面食らうのではないかと思いますけど。坂田靖子は、コアなファンを持っている漫画家ですが、ずいぶん以前にミステリやホラーのパロディを連載していた時期があって、ミステリマガジンの古くからの読者にはおなじみの人。

そのころの作品は『バスカビルの魔物』という単行本で読むことができます。今回のはパロディではありませんけど、作者の調子は以前とあんまり変わっていません。実は、今号の掲載作品の中で、ミステリになっていてしかも料理が中心ネタになっていると言い切れる、つまり特集ページにふさわしいと思えたのは、この漫画だけでした。まあ、ミステリファンが読めば、このオチは見えてしまうかも知れませんが……。

飯野文彦と霞流一の対談は、この2人がほぼ同世代(霞が2才上)で、ワセダミステリクラブにいたことから、思い出話に花が咲いちゃっています。ミステリの一場面で食べ物を登場させるときの、作家としての扱い方に関するくだりは、興味深く読めました。あとは、ちょっとグダグダ。霞流一が、けっこう自分の料理にこだわりを持っているということだけは、よくわかりましたけど。

コラムのうち、料理研究家&料理探偵という肩書きになっている貝谷郁子の「グルメ・ミステリの今と、これから」は、それ系のブックガイドを兼ねた内容です。未読作品がいくつか紹介されていましたし、文章も練れていて、大変参考になりました。コラムのもう一本は、数年前に本誌で連載されていた、羽田詩津子の「猫はキッチンで奮闘する」の番外編みたいなもの。こういうのって、出てくる料理のレシピが美味そうじゃないと、とたんに興味が失せてしまいます。今回のは……以下略。

岡野薫子は、なぜか年に1〜2回、ミステリマガジンに短編が掲載される作家。本来は児童文学系の人ですが、本誌に登場するときは幻想味の強い作品を書いています。今回の『都会の蜃気楼』も、その線にそったもの。ふわふわと白昼夢の中に引っ張り込まれるような話で、だらだら読んでいると、最後でビックリさせられます。面白いんですけど、ちょっと冗長に感じるのはどうしてでしょう。

今号の巻頭インタビューは集英社コバルト出身の図子慧。『ラザロ・ラザロ』とか『閉じたる男の抱く花は』を読んで、腐女子寄りで妄想系の女性なんだろうと思っていましたが、あまりにも予想通りの人だったので、かえって驚いてしまいました。ただ、イアン・ランキンはともかく、マイケル・ギルバートとか藤沢周平を読んで、文体や伏線の勉強をした、というのは意外。これがどう活かされていたのか、ちょっと読み返してみたくなりました。

ミステリマガジンで長編を分載する場合、全8回というケースが多いので、池井戸潤の『藤村巴里日記』はそろそろ終わりだろうと思っていたのですが……どうもまだ続きそうです。朝暮三文の『ポルトガルの四月』は意外と面白くなってきました。山田正紀の『ファイナル・オペラ』は完結するまで放置プレイ中。というわけで、来月もまだ長編連載が3本という状態が続くようです。そろそろ、こんな状態には終止符を打ちましょうよ、編集部のみなさん。「ベスト・ミステリ2007」の募集なんてやるより、少年ジャンプみたいに本誌掲載作品の人気投票でもやったらどうですかね。

※この記事はブログ村 ミステリー・推理小説にエントリーしています。

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