貼雑帖(はりまぜちょう)

アクセスカウンタ

help RSS ミステリマガジン 2008年1月号

<<   作成日時 : 2007/11/30 23:52   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

この2008年1月号からの、誌面リニューアルを謳っていたミステリマガジン。新しい号の表紙を見ての印象は、「うわぁ、ダッセー!」でした。

まずは誌名のロゴデザイン変更。これまで「ミステリ」が大きく「マガジン」を小さい文字で配置していたのをやめて、同じ大きさにしたのに加え、「ハヤカワ」の文字が新たに小さく入っています。書体も若干アレンジされていて、これまでのものとバランスは似ていますが、曲線の多いデザインになりました。私は前の書体のほうが好きでしたが、このへんはまあ、好みの問題でしょう。それにともなって、背表紙のデザインも変わりました。ミステリマガジンを購入するようになって約30年になりますが、これは初めてのことです。書棚に並べたときの統一感がなくなってしまいました。

表紙にはここ数年、浅井慎平氏の写真が使われていましたが、今後はいとう瞳さんのイラストがメインになるようです。特集タイトルやコンテンツの一部、あるいは掲載作家の名前などを表紙で提示するのはどの雑誌でもやることで、それはミステリマガジンでも同様。しかしこれまでは、写真やイラストとのバランスが取れた、小さな文字での表示でした。ところが今号ときたら、バランス一切無視。ゴシップ誌並の文字サイズになっています。まあ、デザインに文句を言ってもしょうがないんですが、こういう趣味的な雑誌である以上、あんまり野暮ったいのはやめて欲しいですね。これでは、若い女性が小脇に抱えて……って感じじゃありません。

表紙を開けて、コンテンツページを見てビックリ。これまではずっと、黒とスポットカラーの2色刷りだったのが、4色に。巻頭の16ページ分がカラーになっています。こんなことに予算を使うなよ……と思いつつ、今回の目玉企画である“座談会「新・世界ミステリ全集」を立ち上げる”のページを開いてまたビックリ。何ですかこのキタナイ印刷と素人写真は。いや、これまでも、プロのカメラマンが撮ったにしては下手くそな写真がよくありましたが、4色になったことで、ライティングのまずさが強調される結果になってしまいました。どうも、編集部は予算の使いどころを間違えているような気がしてなりません。有栖川有栖のインタヴューページでは、いきなり“人類境界”なんて誤植をやってくれてますし。これまで見たことがなかった、フォーク系のフォントを人名部分に使っているのにも違和感がありました。

さて、肝心の内容なんですが、今号の特集は「21世紀の来るべきミステリ作家たち」となっています。特集にくくられた創作は6つ。ただし、そのうち3つはショートショート(米澤穂信・石持浅海・海堂尊)なので、分量的には大したものではありません。あとは福田和代、イアン・ランキン、そしてジョージ・P・ペレケーノスの短篇。それに、綾辻行人と道尾秀介のインタヴュー「未来予想図」(ぷぷっ)がそれぞれ2ページずつ。特集ページは以上ですが、「ミステリ相関図」と題したページも、それに関連した企画と言えそうです。しかし、杉江松恋が担当した〈日本篇〉のほうはともかく、古山裕樹による〈海外篇〉なんて、ほとんど意味のないページになっています。

それはともかく、コンテンツ部分の口上には「今月号よりミステリマガジンはリニューアルいたしました。海外ミステリ専門誌から、海外、日本を問わない、明日のミステリ界を担う、ミステリ総合誌へとはばたきます」……って、前にも書きましたけど、とっくに海外ミステリ専門誌などではなくなっていたのに、何を今さらという感じ。例によって一番ページ数を食っているのは長篇連載で、その全部が日本人作家のものなんですから、ちゃんちゃらおかしくなってしまいます。

ランキンとペレケーノスは、早川書房内にファンでもいるのか、やたらと取り上げられる機会が多い作家ですが、彼らが「21世紀の来るべきミステリ作家」なんですか? 私には、とてもそうは思えないんですけど。ランキンの短篇『縛り首が多いほど』は、演劇好きの若者たちであふれているエジンバラ・フェスティバルのさなか、舞台パフォーマンスで使うためのキャスター付き絞首台が街に引っ張り出され、演劇サークルの学生がそれにぶら下がって死んでいたという事件を、おなじみリーバス警部とホームズ刑事が捜査するというもの。

いちおう、スタイルとしてはフーダニットになっていて、中心アイデアは珍しくはありませんが、できはまあまあといったところでしょう。リーバスとホームズの掛け合いも面白く書かれています。しかし、ランキンはやはり本質的に長篇作家なのだろうと、改めて思いました。長さのわりには登場人物が多く、描き分けもあまり上手くないんです。

ペレケーノスの短篇『プラスティック・パディ』は、例によって社会の底辺をうろついているような若者たちが主人公のお話。一行目からいきなり、「おれはアラブ人が大嫌いなんだ」ときたもんだ。これが21世紀を担う作家として、ことさら取り上げるような作品の書き出しにふさわしいかどうか、考えなくてもわかりそうなもんですが。やたらと、テレビドラマを引き合いに出した比喩を使うのも、作家的な表現力のなさを露呈しちゃってる気がします。結末の脳天気さにもヘナッとなりました。

福田和代の短篇『プロメテウス・トラップ』は、留学生時代に天才的なハッカー(正確にはクラッカー)として、アメリカで名を馳せた男・能條良明が主人公。三年も収監され、犯罪歴のついてしまった彼は、日本に帰ってからは過去を隠し、プログラミングの請負い仕事でその日を暮らしています。その彼が、ある晩バーで知り合った謎の男から、過去をバラされたくなければICチップの内容を解読しろと脅迫まがいの依頼を受け、事件に巻き込まれていくというお話。オチはちょっと意外でしたが、トリックの説明部分がモタモタしていて理解しにくく、何度か読み返すハメになってしまいました。この作品はシリーズ化される予定とのこと。今後に期待しましょう。

米澤穂信の『川越にやってください』は、目次では短篇扱いですが、分量的にはショートショート。10月ごろ、実際に見た夢をそのまま書いたという体裁になっていますが、ちゃんとオチまであるので、ホンマかいな?という感じ。石持浅海の『ご自由にお使いください』は本格系。アイデアは悪くないんですが、書き方のせいなのか長さのせいなのか、半分ほど読んだところでオチが見えてしまいました。海堂尊の『二〇十三年第二回大日本ミステリ学会特別講演録』は、ユーモラスなパロディ。掲載作中で一番短く、そして一番面白かった作品です。

これまで巻頭に置かれていた「ミステリアス・ジャム・セッション」に代わり、「迷宮解体新書」というコーナーが開始。しかし、切り口が若干違うというだけで、作家のインタヴューページであることには変わりありません。第1回のゲストは有栖川有栖。このほか巻頭では、「私の本棚」というどっかで見たことあるような新企画がスタート。こちらのゲストは逢坂剛。思っていたより洋書がたくさん並んでいて驚きました。でも、蔵書数なら私のほうが多そうです(w)。

小鷹信光の「新・ペイパーバックの旅」、石上三登志の「日本映画のミステリライターズ」、直井明の「ヴィンテージ作家の軌跡」、笠井潔の「ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?」、野崎六助の「夜の放浪者たち」といったエッセイ類は連載継続。新連載として1〜2ページ程度のコーナーがいくつか新設されていますが、添え物程度の内容です。特に、柳原慧による「殺人占い」なるコーナーは完全にページの無駄づかい。アホかいな、としか言いようがありません。書評のページも若干変わり、コラム・バトルに続いてクロスレヴューのコーナーもなくなってしまいました。

うーん。まだ、リニューアル直後ですから、今後少しずつ軌道修正されていく可能性はあるでしょうが、今回から変えられたところに、前より良くなったと思える箇所がほとんどない、というのが感想です。デザインは当面これでいくとしても、3本の長篇連載が片づいたら、少なくとも1本は海外作家のものにするとか、いっそ長篇はやめて、以前のように短篇中心の編集方針に戻すべきだと、私は強く主張したいと思います。日本人作家の作品を取り上げるにしても、絶対そのほうが育成的な場の提供になりますって。

※この記事はブログ村 ミステリー・推理小説にエントリーしています。

テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ミステリマガジン 2008年1月号 貼雑帖(はりまぜちょう)/BIGLOBEウェブリブログ
[ ]