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zoom RSS 新春特別企画 『37の短篇』 は、いま……。

<<   作成日時 : 2008/01/01 23:56   >>

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あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。新年最初の更新なので、ちょっとした企画記事を書いてみました。

古典ミステリの復刻が相次いだ昨年を締めくくるかのように、『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』(角川文庫)という本が、年末に出版されました。その中に、フランク・R・ストックトンの『女か虎か』という短篇が収録されています。いわゆる“3大リドル・ストーリー”のひとつに数えられ、これに触発されて作品を書いた作家は、日本でも高木彬光、小松左京や福永武彦から、東野圭吾や芦辺拓にいたるまで多数という名作。何度かアンソロジーなどに再録されてはいますが、長らく入手困難な状態が続いていました。

山口雅也の本にはこのほか、スティーヴン・バーの『最後で最高の密室』という短篇が入っています。また序文では、クレイトン・ロースンの『天外消失』やクリスティアナ・ブランドの『ジェミニイ・クリケット事件』について触れられています。実は、『女か虎か』を含めたこれら4作品の題名を聞いたとき、年季の入ったミステリファンなら連想するであろう一冊の本があります。それが、早川書房による「世界ミステリ全集」の最終巻として出された『37の短篇』なのです。

この巻は極めつきの傑作ばかりを集めた“超アンソロジー”として、ファンの間では伝説の一冊となっています。しかし、全集本でもありますし、入手は非常に難しく、古書店などでもかなりの高値が付けられていることでも知られています。文字通り、37の短篇が収録されているわけですが、中には今回の『女か虎か』のように、わりと何度もリプリントされている作品もあれば、ずっと眠ったままのものもあります。去年ちょっとした評判になったウィリアム・ブリテンの短篇集『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』(論創社)の表題作も、実は『37の短篇』に入っています。

そこで、実際のところ、現時点で簡単に読むことができる『37の短篇』収録作品はどのくらいあるんだろう、と思ったわけです。まあ、全部が読めるということはあり得ないにしても、ここ数年の古典ブームのおかげで、かなりカヴァーできるようになっているのでは、と予想していたんですが、調べてみた結果は以下のようなものでした。リストは、『37の短篇』の収録順になっています。

  ★……現在、入手が難しい作品
  ◎……現役の短篇集やアンソロジーで簡単に読める作品
  ○……現役本で読むことは可能ですが、近い将来、品切れが予想される作品

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
★エドガー・ライス・バロウズ  『ジャングル探偵ターザン』
       …… 再録なし
★ブレット・ハリデイ  『死刑前夜』
       …… 再録なし
◎ジェイムズ・サーバー  『虹をつかむ男』
       …… 異色作家短篇集7 『虹をつかむ男』 (早川書房)
◎クレイグ・ライス  『うぶな心が張り裂ける』
       …… 『密室殺人傑作選』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
★ジョルジュ・シムノン  『殺し屋』
       …… 『メグレ夫人の恋人』 (角川文庫・絶版) ※『殺し屋スタン』に改題
○エリック・アンブラー  『エメラルド色の空』
       …… 『復刻 エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン〈No.1-3〉』 (早川書房)
◎ヘレン・マクロイ  『燕京綺譚』
       …… 『歌うダイヤモンド』 (晶文社ミステリ) ※『東洋趣味』に改題
○フレドリック・ブラウン 『後ろを見るな』
       …… 『復刻 エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン〈No.1-3〉』 (早川書房)
★クレイトン・ロースン  『天外消失』
       …… 再録なし
◎ハリイ・ケメルマン  『九マイルは遠すぎる』
       …… 『九マイルは遠すぎる』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
◎カーター・ディクスン  『魔の森の家』
       …… 『復刻 エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン〈No.1-3〉』 (早川書房)
★アーサー・ウイリアムズ  『この手で人を殺してから』
       …… 再録なし
◎トマス・フラナガン  『北イタリア物語』
       …… 『密室殺人傑作選』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
◎ロイ・ヴィカーズ  『百万に一つの偶然』
       …… 『百万に一つの偶然―迷宮課事件簿〈2〉』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
○Q・パトリック  『少年の意志』
       …… 『金庫と老婆』 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
★ジョン・D・マクドナルド  『懐郷病のビュイック』
       …… 再録なし
★ロバート・アーサー  『五十一番目の密室』
       …… 『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』 (角川文庫・品切れ)
★イーヴリン・ウォー  『ラヴデイ氏の短い休暇』
       …… ブラック・ユーモア選集2 『囁きの霊園』 (早川書房・絶版)
★C・B・ギルフォード  『探偵作家は天国へ行ける』
       …… 再録なし
◎エドガー・アラン・ポー&ロバート・ブロック  『燈台』
       …… 『ポオ収集家』 (新樹社)
◎フランク・R・ストックトン  『女か虎か』
       …… 『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』 (角川文庫)
◎ロアルド・ダール  『おとなしい兇器』
       …… 『あなたに似た人』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
◎リチャード・マシスン  『長距離電話』
       …… 異色作家短篇集4 『13のショック』 (早川書房)
○エヴァン・ハンター  『歩道に血を流して』
       …… 『歩道に血を流して』 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
◎ヘンリイ・スレッサー  『死刑執行の日』
       …… 『うまい犯罪、しゃれた殺人』 (ハヤカワ・ミステリ文庫) ※『処刑の日』に改題
◎ジャック・フィニイ  『死者のポケットの中には』
       …… 異色作家短篇集13 『レベル3』 (早川書房) ※『死人のポケットの中には』に改題
★アル・ジェイムズ  『白いカーペットの上のごほうび』
       …… 再録なし
★ポール・アンダースン  『火星のダイヤモンド』
       …… 『密室大集合』 (ハヤカワ・ミステリ文庫・絶版)
◎デイヴィッド・イーリイ  『ヨット・クラブ』
       …… 『ヨットクラブ』 (晶文社ミステリ) ※『ヨットクラブ』に改題
◎ジャック・リッチー  『クライム・マシン』
       …… 『クライム・マシン』 (晶文社ミステリ)
◎コーネル・ウールリッチ  『一滴の血』
       …… 『黄金の13/現代篇』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
◎ウイリアム・ブルテン  『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』
       …… 『密室殺人傑作選』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
◎スティーヴン・バー  『最後で最高の密室』
       …… 『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』 (角川文庫)
○ロバート・L・フィッシュ  『アスコット・タイ事件』
       …… 『シュロック・ホ−ムズの冒険』 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
★リース・デイヴィス  『選ばれた者』
       …… 『エドガー賞全集』下巻 (ハヤカワ・ミステリ文庫・絶版)
◎エドワード・D・ホック  『長方形の部屋』
       …… 『サム・ホーソーンの事件簿II』 (創元推理文庫)
◎クリスチアナ・ブランド  『ジェミニイ・クリケット事件』
       …… 『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』 (角川文庫)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

作家名や作品名は『37の短篇』に拠りました。「ウイリアム・ブルテン」は当時の表記です。また、現役本の中で別のタイトルになっている作品については、改題後のタイトルも併記しました。ロバート・アーサーの『五十一番目の密室』には★を付けましたが、これが収録されている『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』(角川文庫)は、まだ品切れになってから間もないので、書店の店頭には残っている可能性があります。読みたい方はお急ぎを。

それから、カーの『魔の森の家』は『妖魔の森の家』として『カー短編全集2』(創元推理文庫)に、ブラウンの『後ろを見るな』は『まっ白な嘘』(創元推理文庫)に、『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』は上記の論創社の本に、ブランドの『ジェミニイ・クリケット事件』は『招かれざる客たちのビュッフェ』(創元推理文庫)に、それぞれ別の訳で収録されています。特に『ジェミニイ・クリケット事件』は、角川文庫版と創元推理文庫版で結末が違う別ヴァージョンになっているので、ご注意ください。

というわけで、結局37篇のうち25篇は現役本で読めることがわかりました。とはいえ、残り12篇もあなどれない名作ばかりで、特にロースンの『天外消失』とかシムノンの『殺し屋』、ウイリアムズの『この手で人を殺してから』、ギルフォードの『探偵作家は天国へ行ける』なんかは、ぜひどこかで再録して、たくさんの読者に読んで欲しいと思います。ギルフォードなんか、個人の作品集が出ててもおかしくない短篇の名手なんですけどねえ。

ああ、手間をかけずに記事を一本でっち上げようと思っていたのに、かえって大変でした(w)。この記事が何かのお役に立てましたら、ぜひポチッと応援クリックをお願いします。

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コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
明けましておめでとうございます^^「37の短篇」めっちゃ気になりますねぇ。まとめて読みたいものです。BookOffに落ちてないかなぁ・・・(笑)
レイバック
2008/01/03 00:26
あけましておめでとうございます。
『37の短篇』はねえ……マニアが亡くなって、何も知らない家族がブックオフに持ち込んだ、とかいうのでもない限り、めったなことじゃ出てこないでしょうね(w)。
800ページ近い大冊なんですけど、図書館なんかでも、この巻だけ「紛失」しちゃってるケースがすごく多いらしいんですよ。
のちんかん
2008/01/03 04:11
あけましておめでとうございます。
昨年はうちのブログにも訪問していただき、ありがとうございました。
高校生の時、クリスティーの「そして誰もいなくなった」で、カタカナ名が覚えられず、犯人もトリックも意味不明だった、という失態を犯してから翻訳ミステリーとは無縁だったのですが、
こういう記事を読むと無性に海外ミステリーが読みたくなりますね。
短編なら大丈夫かなぁ?
登場人物の隙なそうなものから挑戦してみますね。
今年もよろしくお願いします。
ia.
2008/01/03 22:26
あけましておめでとうございます。
こちらこそ、ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。
翻訳ミステリは、名前が覚えられないって方は多いですね。といって短篇だと、登場人物とおなじみになる前に話が終わってしまうので、長篇とどちらが良いかは微妙かもしれません。
そこで、アシモフの『黒後家蜘蛛の会』(創元推理文庫)なんかどうでしょう。変なタイトルですが、そういう名前でお食事会をやってる6人の中年男たちの話です。
メンバーは順番にホストになって、食事会にゲストを1人連れてきます。そのゲストが持ち込んだ問題を、あーでもないこーでもないとやっているうちに、横で聴いていた老ウェイターのヘンリーが謎を解いてしまう、という短篇シリーズです。面白いですよ。
のちんかん
2008/01/03 22:59
あけましておめでとう御座います(遅っ)
今年もよろしくです〜。
「37の短篇」、近くの図書館にありました。
でも「禁帯出」ですって。どうしてか聞いたら、「よく持って行かれるって通達が出ている本リストに入っているから」だそうです。
しょうがないので、何回も通って読んでいます。
やっぱりおもしろいですね〜。
ニコ
2008/01/08 12:46
おお、図書館にあったとは幸運ですね。でも禁帯出か……。
デジカメが使えるような環境なら、ページをパチパチやっちゃうのも一つの手段ですよ(w)。読みにくいかもしれませんが。
のちんかん
2008/01/09 00:53
失礼します。
「37の短篇」が復刊されるという記事を(http://d.hatena.ne.jp/udeoshi/20081124/p1)書いた際にこちらのページにリンクを張らせていただきました。
万が一ご迷惑でしたらご一報ください。
udeoshi
2008/11/24 22:35

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