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zoom RSS ドラマ 『耳なし芳一からの手紙』 を観て。

<<   作成日時 : 2008/01/11 23:55   >>

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初詣の道すがら、参道に並ぶ露店などに、この番組の宣伝ビラがあるのを見かけ、地元ロケが謳われていたので、ついつい観てしまいました。

地元というのは山口県下関市です。全国的には、フグ料理ネタで取り上げられることがほとんどで、ここがいろんな意味で歴史的な街であることは、さほど話題にならないんですが、考えてみれば源平の昔から戦国時代、幕末、明治維新、日清戦争にいたるまで、歴史の転換点で重要な事件の舞台になってきたところでもあります。といっても、地元の人間ですら、そういう意識をあまり持ってないのが現状なんですけども。ドラマの冒頭、「わしら下関の人間は、みんな平家びいきじゃ」という漁師さんのセリフがありましたが、それが市民一般の感覚かというと、ちょっと違う気がします。

まあしかし、小説やドラマの舞台になったりすることは比較的少ないので、こういう形で取り上げられたら、地元の人間としてはやっぱり観てみようか、という気になります。今回のドラマは内田康夫の浅見光彦シリーズの一篇、『耳なし芳一からの手紙』(角川文庫)が原作。お話のスタートは「耳なし芳一堂」のある赤間神宮からです。ここは、平家終焉の地であり、幼くして入水した安徳天皇が祀られているところなのです。実は、わが彼女はここで巫女さんのバイトをした経験があるので、妙に身近に感じられるところでもあります。

事件の発端は、下関のルポに来た浅見光彦(中村俊介)が、耳なし芳一堂のそばで琵琶の音に聴き入っている老人を見かけ、東京への帰途についた浅見が乗った高速バスの車内で、その老人が殺されるというもの。でも、下関と東京を結ぶ高速バスは、去年の春だったかに廃止になってしまっているので、「これいったい、いつロケしたんだろう」と思いました。画面に映ったバスには、「ふくふく号」という当時の名前が表示されていましたから、路線廃止の前に撮られたのは間違いないはず。となると、このドラマは少なくとも撮影から一年やそこらは寝かされていた計算になります。

私は内田康夫のファンじゃありませんし、正直なところ浅見光彦の登場作品は一部しか読んでいませんので、この『耳なし芳一からの手紙』のことも知らなかったんですが、原作にあたってみると、事件が発生するのは高速バスの車内ではなく、新下関駅からの新幹線でのこと。それをわざわざバスに変更したのは、ロケ地のつながりの良さを優先したからなのかと思いましたが、そのあとのほうでは、まったくその種の配慮はないようなシーン割りになっていました。ということは、結局これもバス会社とのタイアップだったんでしょうね。でも、番組放映前に路線のほうが持ちこたえられなくなってしまったのでしょう。乗客でいっぱいの車内が写るカットが、むなしく見えます。

さて、このタイアップ企画のおかげで、話の流れが非常に不自然なものになってしまいました。バスの車内で事件が起きた以上、一緒に乗り合わせていた乗客すべてが足止めされるのが当然で、そうすれば事件のカギを握る、ある重要な人物が車内にいたこともすぐにわかったはずなのに、その人物はまんまと現場から立ち去ってしまいます。下関署の刑事さんたちが、あまりにマヌケなものにされてしまっているのは、少々お気の毒です。

それはそうと、浅見光彦役はいつの間に中村俊介になっていたんでしょう。全然知りませんでしたが、フジテレビでの映像化では、前任の榎木孝明から中村俊介に代替わりして、もう5年近くになるんですね。調べてみると、TBSで放映するときの浅見役も、辰巳琢郎から沢村一樹に代わっていました。私の中での浅見光彦のイメージは、いまだに火曜サスペンスの水谷豊なんですが、もう彼も「相棒」の右京さんになってから長いんですから、当たり前といえば当たり前の時の流れなんですけども。

去年、このブログで大谷羊太郎の『下関仙崎・愛と殺意の港』(ジョイ・ノベルス)を取り上げたときにも書いたんですが、こういうドラマを観ているとき、地元の人間としては、どうしても細かいことが気になってしまいます。その最たるものが言葉づかい。下関というところは、もちろん方言はあるんですが、イントネーションは標準語と全く変わらないので、地方色を出そうという意図でおかしな演出をすると、逆にリアリティがなくなってしまうんです。

今回、ドラマ中で取り上げられた下関の観光スポット、「火の山」と「角島」については、地元民であるはずの池宮果奈(松本莉緒)の発音がすごく気になりました。彼女は「火の山」の「ひ」にアクセントを置いていたんですが、地元民は「ひ」よりも「のやま」のほうを強く発音するんです。また、クルマCMのロケ地として全国的におなじみの「角島」のほうはその逆で、「つ」にアクセントを置く発音が一般的なんですが、こちらは「の」を強く発音していました。

なんだそんなこと、と言われそうですが、地方ロケをするなら、こういう地元式の発音に触れるチャンスはたくさんあったはずですから、できればちゃんとやって欲しいものです。でないと、『つぶやく骨 秋吉台殺人事件』(光文社)を書いた田中光二のように、山口県では関西弁を話しているなどという、飛んでもない誤解をする作家が出てきちゃいますから。池宮果奈の父親役を演じた原田大二郎さんは山口県育ちなんですが、それは下関から遠く離れた熊毛という地域でのこと。下関は福岡県のすくそば、熊毛は広島県に近いところなので、言葉はかなり違います。それでも不自然な発音がなかったのはさすがでした。

事件のほうは、いつもの浅見光彦シリーズと大差ない展開。最初は地元警察に疑われたりする浅見が、実は刑事局長の弟だと知って、途端にヒーコラした対応に変わる、というお約束のシーンもあります。これじゃあ水戸黄門とかわりませんが(w)、ファンはそれが楽しいんでしょうね。浅見はルポライターですから、西村京太郎の十津川警部シリーズと違って、全国どこへ行ってもおかしくはないんですが、話のパターンはどれも似たり寄ったり。昔は、内田康夫も西村京太郎も、もっと意欲的なミステリを書いていたんですけどねえ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。
去年の10月頃撮影されたみたいですよ。
新幹線だと撮りにくかったんじゃないですかね〜
15年以上前の原作がドラマ化されるのって、珍しくないです?
kororo
2008/01/14 22:38
はじめまして。コメントありがとうございます。
撮影は去年の10月なんですか!うーむ。
私、この高速バスの東京路線には乗ったことがないんですけど、同時に廃止された広島行きは一度利用したことがあって、乗客の少なさにビックリした記憶があるんですよ。それにしてもイタイなあ、サンデン交通(w)。
旅情ミステリだと、新幹線内のシーンなんて珍しくもないですから、やっぱりタイアップだろうとは思うんですけどね。
それにしても、浅見光彦シリーズは根強い人気がありますね。「永遠の独身33歳」ってところがウケるのかなあ。
のちんかん
2008/01/15 05:51

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