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zoom RSS エドワード・D・ホック、死す。

<<   作成日時 : 2008/01/22 23:56   >>

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思い返してみれば、私がホックの作品と初めて出会ったころには、ディクスン・カーの姿がまだ現役作家として「陪審席」にあったのでした。

カーの名に引かれて買った「ミステリマガジン」だったのに、そして「本格探偵小説特集」号だったのに、「陪審席」というのが短篇の題名ではなく、書評コーナーのことだったと知って失望させられたのも束の間、私は初めてホックの短篇に驚かされるという体験をしました。『殺人犯レオポルド警部』を読んだからです。これは、現在では『レオポルド警部の密室』という邦題で『サム・ホーソーンの事件簿V』(創元推理文庫)に収録されている傑作。エドガー賞を受賞した『長方形の部屋』と並んで、レオポルド警部ものの白眉だと思います。

そして、先月。「ミステリマガジン」最新号の特集は「親子で愉しむジュヴナイル・ミステリ」。ここには、ホックの創造した探偵役の中でも、日本未紹介であった少年探偵、トミー・プレストンもの全2篇も掲載されていました。本格系の作品が載ることがめっきり少なくなってしまった「ミステリマガジン」で、ホックだけは特別扱いされているような気がして、嬉しくなりました。昨年は、ジョージ・ワシントンの密偵であるアレキサンダー・スウィフトの登場作品も掲載されていたりで、ホック健在なりの感を強くしていたんですが、よくよく考えれば、サム・ホーソーン博士や怪盗ニックといった、ホック軍の主力投手たちの登板回数が減っていたわけでもあり、何らかの変化はあったのかも知れません。

翻訳家・木村二郎さんはホックの盟友とも言える存在であったらしく、「ガムシュー・サイト」の国際版のほうを見てみると、2003年のバウチャーコンの際に撮られたポートレイトとともにホックの訃報が載っています。それによると、ホックの短篇は「ミステリマガジン」の本家筋である「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」(EQMM)の1973年3月号以来、すべての号に掲載されているとのこと。確認してみると、「EQMM」最新号(2008年2月号)は「Holmes in Action!」と題するシャーロック・ホームズの小特集で、ホックは「アイリーン・アドラーの大学生になった息子」が登場するパスティーシュを書いているようです。この間の掲載作品だけでも420篇以上。文字通りの看板作家だったわけですね。

総短篇数は約1000。1人で銭形平次の捕物帳を400篇以上も書いた野村胡堂は、おそらく単独作家による単独キャラクターの作品数では世界記録保持者だと思いますが、総短篇数でははるかに及びません。純文学や、他のエンタメ系の領域まで含めればわかりませんが、少なくともミステリの世界では間違いなくトップ記録の保持者であり、今後破られる可能性すらないような気がします。そして、得意だった不可能犯罪ものの数でも圧倒的。カーは「陪審席」からホックをどのように眺めていたのかわかりませんけれど、「ホックはあなたの最良の後継者だった」と書いても、きっと許してもらえるでしょう。

ホックのデビュー短篇である『死者の村』は、現在でも『ホックと13人の仲間たち』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)で簡単に読むことができます。この作品に登場する、2000歳に近い不死のオカルト探偵サイモン・アークが、ホックの数多い持ち駒の中の最初のキャラクターでもあるわけです。17日に自宅で突然亡くなったというホックの訃報を聞いて最初に思ったことは、今年、創元推理文庫から刊行が予定されている『サイモン・アークの事件簿』がちゃんと出版されるんだろうか、ということ。そして、「ミステリマガジン」では近々ホックの追悼特集が組まれるだろうな、ということ。そんなミステリ読みとしての浅ましさばかりだったことに気付いて、涙が出てきました。

ホックは、ホックは、サイモン・アークと同じように、不死身の人だと思っていたのに。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ホックさん、亡くなってしまったんですね・・・。
わたしものちんかんさんに教えて貰った「37の短篇」で「長方形の部屋」を読んで、こんなすごい短篇を書く人がいるんだと思って感心したところだったんです。
ご冥福をお祈りします。
ニコ
2008/01/23 12:56
本当に、残念でたまりません。
去年11月の天城一さんに続き、ホックまで逝ってしまうとは……。

ところで、『長方形の部屋』が気に入られたのなら、今度は天城さんの傑作短篇『高天原の犯罪』を読んでみてください。『長方形の部屋』と、根本的な部分で共通するものを感じます。
のちんかん
2008/01/23 23:20
ホックの本を検索してたらたどりつきました。
亡くなられたのですか・・・。そうですか・・・。
最近ホックを知って、サム・ホーソーン、怪盗ニック、短編集など手に入るものは全部読んできて、新刊出るのが楽しみでした。
レオポルド物、未翻訳物を新刊で読みたいです。
トメハル
2008/05/19 22:03

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