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zoom RSS 2008年2月のミステリ新刊

<<   作成日時 : 2008/01/30 23:58   >>

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古典ミステリファンにとって、2月の注目作はコニントンの長篇。ですが、長年“幻”であり続けてきた名作『検死審問』も見逃せませんね。

◎J・J・コニントン 『或る豪邸主の死』(長崎出版)
戦前、『当たりくじ殺人事件』および『九つの鍵』の2長篇のみが抄訳されただけのイギリス作家、コニントンの長篇ミステリ第1作。1926年の発表ですから、アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』(クリスティー文庫ほか)と同じ年ですね。コニントンの本職は大学で教鞭をとる化学者で、ミステリ作家以前にSF作家としてデビューしており、この作品にも“殺人光線”が登場するとのこと。ミステリとしては、エラリイ・クイーンに先駆けた「読者への挑戦」付きなのが見どころです。

◎パトリック・クェンティン 『グリンドルの悪夢』(原書房)
4人の作家が関わった合作ペンネーム、パトリック・クェンティン(またはクェンティン・パトリック、あるいはジョナサン・スタッジ)の作品中でも、本格色の強かった初期を代表するといわれる一冊。リチャード・ウィルスン・ウェッブとメアリー・ルイーズ・アズウェルの合作です。エラリイ・クイーンのライヴァルとも目されていた実力派ですが、翻訳紹介はかなり不完全。これを機に、もっと訳して欲しいものです。本作は、頻発する動物失踪事件に端を発し、女の子の失踪、その父親の不可解な死、と続発する事件の真相を探るもの。

◎アリス・ミュリエル・ウィリアムスン 『灰色の女』(論創社)
1月予定だと思ってましたが、延びたようですね。黒岩涙香が翻案し、さらにそれを江戸川乱歩もアレンジした名作『幽霊塔』の原作。ミステリとメロドラマやゴシックロマンの境界がハッキリしてない時代の作品ですが、「首のない死体」ものの元祖的存在とされる大長篇であり、乱歩らの翻案ではかなりの部分がカットされているので、今回の刊行は初の完訳版ということになるでしょう。

◎ジョン・ブラックバーン 『刈りたての干草の香り』(論創社)
同じ論創社から出た『闇に葬れ』が意外と好評だったんでしょうか。ホラーっぽく始まってSF的に展開し、へんてこりんに着地するジャンルミックス小説でした。本作のほうは、ソ連のある村が軍隊によって焼き払われ、住人が収容所に入れられたという情報に、英国情報局のカーク将軍が調査に乗り出す、というもの。まあナチスやソ連が出てくるのは、ブラックバーンのお家芸なんですけど。

◎パーシヴァル・ワイルド 『検死審問 インクエスト』(創元推理文庫)
今月発売された『不思議なミッキー・フィン』(河出書房新社)のエリオット・ポールと同様、東京創元社からずいぶん前に出ていたワイルドの第2長編。江戸川乱歩が『幻影城』の中でネタばらしをやっているのでご注意を。個人的には、どうせなら密室ものである第1作から順に出してほしかったんですけども。この作品はユーモアの横溢する本格もので、全篇が検屍審問の証言記録からなるという、特殊なスタイルの法廷ミステリでもあります。乱歩は1935年以降のベスト10にこの作品を入れています。

◎高城高全集1 『墓標なき墓場』(創元推理文庫)
昨年出た『X橋付近 高城高ハードボイルド傑作選』(荒蝦夷)が『このミス』で上位ランクに入って、にわかに脚光を浴びたばかりだというのに、もう文庫で全集が出るなんて。全3巻の予定だそうで、『墓標なき墓場』は作者唯一の長篇です。大藪春彦、河野典生らとともに、日本ハードボイルドの黎明期を支えた伝説の作家。「ミステリーズ!」の次号でも特集が組まれるらしいですが、収録作品がかぶる結果がミエミエですから、やめてほしいですね。

◎小林泰三 『モザイク事件帳』(東京創元社)
犯人当て、安楽椅子探偵、日常の謎、等々。探偵小説でお馴染みの7つの「お題」に、鬼才・小林泰三が徹底した論理で挑む! 黒い笑いとロジックが 構築する、精緻なミステリ連作集……だそうですが、作者には『密室・殺人』(角川ホラー文庫)で一度痛い目にあわされているので(w)、用心しいしい読みたいですね。

◎ジョアン・ハリス 『紳士たちの遊戯』(ハヤカワ・ミステリ文庫)
ベストセラーになり、映画化もされた『ショコラ』(角川文庫)など、“食”をテーマにしたロマンティックな小説で知られる作者のミステリ作品。プロパーのミステリ作家ではありませんが、この作品はMWAなどの賞にもノミネートされ、評価も高いようです。スタイルは本格ミステリ系で、トリッキーな物語だとのこと。イギリスの名門男子校を舞台に、学園を危機に陥れようとする謎の人物へ頭脳戦を挑む老教師の活躍を描く物語。

◎ロバート・ファン・ヒューリック  『紫雲の怪』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ディー判事(狄仁傑)シリーズで唯一の未訳長篇……と広告では謳われていますが、実はこれ以外にもう一作、東京で自費出版された初期長篇が残っているので、完璧を期するならそれも訳して欲しいところ。本作は、幽霊が出るという荒れ寺を舞台にした奇怪な事件。やくざものの首なし死体が発見され、その場にいた男が捕縛されますが、やがて見つかった首と胴体が別人のものとわかり、事件は二重殺人へと発展。ディー判事の活躍やいかに。

◎山前譲編 『文豪のミステリー小説』(集英社文庫)
こういうアンソロジーって、何をもって“文豪”とするのかが微妙な気もしますし、坂口安吾や福永武彦みたいに、ミステリ作家としての顔を持っている人をどう扱うのが難しいと思います。以前河出文庫から出ていた『文豪ミステリー傑作選』の2冊(いずれも絶版)とか、同じ山前譲編で出ている『文豪の探偵小説』(集英社文庫)と、内容的にはかぶっちゃうんでしょうね。それとも、わざわざ「探偵小説」と「ミステリー小説」というふうに言葉を使い分けている以上、傾向の違う作品を集めてきてるのかしらん。収録作品を早く知りたいところです。

◎深水黎一郎 『エコール・ド・パリ・殺人事件 レザルティスト・モウディ』(講談社ノベルス)
『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』で、振りかぶったデビューを飾った深水黎一郎の長篇第2作。今回は普通の本格ものに芸術論をクロスオーヴァーさせた渾身の一作、とのことですが、はたして出来映えはどうでしょう。モディリアーニなど、エコール・ド・パリの画家たちに魅了された有名画廊の社長が密室で殺され、なぜか貴重な絵画は手つかずのまま残されていたという事件。被害者の書いた美術書がカギになる、という趣向らしいですが……。

ところで、島田荘司は全集が進行中だというのに、今月の『占星術殺人事件』に続いて『斜め屋敷の犯罪』も「改訂完全版」と銘打って講談社ノベルスから出るようです。これ、どちらも全集に収録された版をさらに改訂したものらしいんですが、いったい何を考えてるんでしょうか。これじゃまるでブルックナーでんがな。ダフネ・デュ・モーリアのゴシック・ロマン『レベッカ』は、新訳がようやく文庫化されたので、買っておきましょう。また、別冊宝島では『このミス』の20周年を記念して 『もっとすごい!このミステリーがすごい!』というのを出版予定。20年間のベスト・オブ・ベストが公開されるらしいんですが、どんな結果になってるんでしょう。ちょっと楽しみです。

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