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zoom RSS 映画 『チーム・バチスタの栄光』 を観て。

<<   作成日時 : 2008/02/11 23:57   >>

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原作読みの私と、原作読まずの彼女。ふたりでレイトショウ鑑賞しました。楽しめましたが、もっと面白くできる素材なのに、という感じでした。

ほぼ2時間の上映時間でしたが、テンポがゆったりしているというか、ハッキリ言えばモタモタした印象を受けました。特にはじめのうち、厚生労働省の調査官・白鳥圭輔(阿部寛)が登場するまでの30分ほどが、かなり間延びした感じなんです。白鳥が画面にいるときはそうでもないんですが、いなくなるとテンポが悪くなる。それで思ったんですけれど、もしかすると監督の意図は、田口公平ならぬ、田口公子(竹内結子)の出演シーンと、白鳥のシーンのテンポを意識的に変えて、対照的な画面づくりをしよう、というところにあったのかもしれません。もしそうだったとしても、成功しているとは言い難いですが。

原作では後半にならないと登場しない白鳥は、映画ではかなり早い段階から出てきます。ここらへんの設定はかなりいじられていて、田口は男性から女性に変えられているだけでなく、天然ボケかつナイーヴな性格にされており、オフの時には病院のソフトボールチームでピッチャーをやっている、というような設定が加わっています。で、農協か何かのチームと対戦している最中に、いきなり乱入してきた白鳥が勝手に打席に立ち、田口の投げたボールを打ち返して場外の照明にぶち当てる、というのが最初の登場シーンになっているんです。まあ、阿部寛の変人役というのはドラマ「トリック」の上田二郎役以来、完全に定着した感があるので、同じ変人でも別な色を出そうとしたってところでしょうか。

阿部寛は、お世辞にも上手い芝居をするとは言えない人ですけれど、出てくるだけで笑えるという、一種独特の存在感を発揮していて、この映画でもキャラづくりは成功していると思います。というか、少なくとも容姿は原作の白鳥と全く違う(小柄で小太り、と書かれていますから)にも関わらず、白鳥役は阿部寛しか考えられない……と思うほど、役柄にははまっています。原作にはなかったようなギャグの追加もあり、声を立てて笑ってしまうシーンもありました。逆に、ちょっとスベリ気味のところも散見されましたが、全体としては良かったんじゃないでしょうか。しかし、田口のほうは緊張感なさすぎ。「人工心肺」を「人工心配」とメモ書きしてバッテンで書き直すなど、医師としての能力に問題があるような描写になっているのもいただけません。

総体的に言うと、原作でもキャラの立て方は際立っているのに、映画版はそれをさらにデフォルメした感じ。チーム・バチスタを率いる桐生助教授(吉川晃司)こそ、ほぼ原作そのままに描かれていたようですが、あとの人物たちは多かれ少なかれアレンジされ、性格づけが極端になっているんです。それが最も顕著なのが、井川遥が演じていた大友看護師。前任者と比較されることへのコンプレックスを抱えている、というのは原作の設定と同じですが、ものすごく情緒不安定な上に、ウソ泣きもするという変なキャラで、しかも手術室での手際の悪さが、これでもか、というほどに強調されています。これでは、チーム・バチスタが精鋭で編成されている、という前提そのものが怪しく感じられてしまいます。

田口というキャラは、前述したように原作よりもかなりナイーヴ。これは、女性キャストにしたことが原因の一端なんでしょうが、不定愁訴外来での日常の勤務ぶり(つまり、患者のグチをどのように聞いているのか)を、やや詳しく描写し、また映画のラスト近くになって、これまでグチを聞かせる立場だった患者たちが、逆に田口を慰めるという、やや型にはまったようなシーンを挿入したかったんだろうという気がします。この映画の監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」を撮った人ですが、斬新な切り口といったものはなく、ベタな作り方をする傾向が強いようです。そのわりには手堅い感じもしないので、どうにも中途半端。これだけの話題作を任せられているのに、力不足が否めません。

そもそも、原作では「関係者の中に殺人者が紛れ込んでいるのか、あるいは医療ミス、または事故なのか」という興味で引っ張る部分がたくさんあったのに、この映画では「犯行現場は、半径10p。この7人の中に、いる」だとか「犯人は、あなたですね」などというコピーを大々的に使い、結末への道筋が限定されてしまってるんです。映画的な単純化が行われているわけですが、私はこうするべきじゃなかったと思います。どうしても、「えー、どういう結末なんだろう」というドキドキ感が薄れてしまうからです。

だからこそ、演出で緊迫感を盛り上げる必要があると思うんですが、田口役が原作よりずっと弛緩した人物造型になっている(このこと自体は、悪くないと思うんですが)のに、白鳥の個性であるロジカル・モンスターとしてのシャープさも失われていて、コミカルな面ばかりが強調されてしまっている。確かにこのほうが取っつきやすくはなるでしょうが、人が何人も死んでいく、シリアスな事件であるという本来のテーマ性が薄れ、サスペンスがガックリ弱まってしまっています。しかも、おそらくは原作者・海堂尊の主張したかったポイントであろうオートプシー・イメージングについても、サラッと流されてしまっていて、印象に残りません。

原作では活躍の場がほとんどない黒崎教授(平泉成)のシーンが多く、代わりに高階病院長(國村隼)や藤原看護師(野際陽子)の登場場面が弱まってしまっているのにも、ちょっと違和感があります。せっかく芸達者な配役なのに、実にもったいない感じ。結局、この映画で美味しいところを持っていったのは、桐生助教授を演じた吉川晃司と、変人っぷりに磨きのかかった阿部寛だけじゃないでしょうか。まあ、黒崎教授は、映画化に際して削られてしまった他のいろいろな登場人物たちの代表でもあるのだと思えば、いたしかたない気はしますけれど。

原作を読まず、私からも必要最小限の情報しか話さなかったうちの彼女は、たぶん平均的な視聴者代表といったところだと思いますが、「面白かった。吉川晃司がすごくカッコ良かった」という感想を述べていて、しかもストーリーに理解しにくいところはなかったと感じているようでした。しかしそのことと、この映画が原作の魅力をうまく伝えているかどうかということはイコールではないわけで、私としては高い評価はできません。

映画の公式サイトで流れている、ちょっと面白いBGMが、本編では全く使われていなかったのも不可解。間延びした画面に間延びした音楽では、サスペンスなんて生まれようもないんですから。制作者サイドは、『ナイチンゲールの沈黙』か『ジェネラル・ルージュの凱旋』を次回作として考えているようですが、次はもっと慎重に、これがミステリ作品なのだということを考えながら作って欲しいものだと思います。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんわ。
この映画気になっていたんですよ。田口=竹内結子と聞いて、ウ〜ンって感じでしたし。
原作を読まずに観たほうが楽しめる、ということかもしれませんね。
関係ないですが、吉川晃司のコンサートに行ったことがあります(笑)
ia.
2008/02/18 01:34
そうなんですよ。竹内結子ほどの美人女医がいたら、病院内で医師たちの噂になるのは間違いないですし、グチ外来には患者が殺到するでしょう。
ある意味、バチスタ・チームなんかより目立つはずなんです。そこがもう不自然。
竹内結子は頑張っていたし、好きな女優さんでもあるんですけど、結局は客寄せパンダにしかなってないんですよね……。
でも、かつての吉川晃司が好きだった人なら、それなりに楽しめると思いますよ(w)。
のちんかん
2008/02/18 05:32

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