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<<   作成日時 : 2007/06/02 21:48   >>

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誰が言い出したのか、“歴史ミステリ御三家”って、リンゼイ・デイヴィス、エリス・ピーターズ、ポール・ドハティの三人のことを指すらしいです。

なんでピーター・ラヴゼイが入ってないのかって気もしますが、この御三家のうち、リンゼイ・デイヴィスは“古代ローマのフィリップ・マーロウ”こと、《密偵ファルコ》シリーズでおなじみ。半年に一冊ぐらいのペースで翻訳が光文社文庫から出ていて、けっこう人気もあるみたいですね。ただ、ずっと読んできた愛読者の眼で振り返ってみると、シリーズとしては第5作の『海神の黄金』か本格ミステリっぽい第6作の『砂漠の守護神』あたりがピークで、そのあとはだんだん下降線をたどっているような気がします。

これ、一作目から通して読んでいる読者じゃないとわかりにくいエピソードが増えてきているのは、まあご愛敬としても(特に第10作『獅子の目覚め』なんかはその典型)、そのうちファルコとヘレナが結婚して子どもができちゃうと、ハードボイルド風味も薄れてきました。かといって第12作『亡者を哀れむ詩』のように、なにも古代ローマの話にする必要のない展開だったり、第13作『疑惑の王宮建設』にいたっては、消化不良のままの謎がいくつも積み残しになっていたりで、ハッキリとした息切れ感があります。

次のエリス・ピーターズといえば、《修道士カドフェル》シリーズ。こっちはテレビドラマにもなりましたけど、ファルコものと違ってリーダビリティが高いとは言えない(つか、デイヴィスってロマンス作家系ですね、感じとしては)からか、人気はパッとしないようですね。まあ、ロマン溢れる“密偵”と、ザビエルっパゲの“修道士”では、しょせん勝負にはならないか(ごめんカドフェル)……。

でも本国イギリスでは、カドフェルのシュルーズベリ修道院が、ホームズのベーカー街のごとく観光名所になっているそうです。テレビのほうは、『憎しみの巡礼』までの13本で制作が打ちきりになってしまったみたいで、残念です。デレク・ジャコビのカドフェルも、山野史人さんの吹き替えも、イメージぴったりだったんだけどなあ。

で、このシリーズ、今は亡き社会思想社の現代教養文庫から出てたんですが、私は社会思想社倒産の第一報を聞いた時点ではまだシリーズを半分くらいしか読んでなくて、あわてて書店に買いに走った記憶があります。その後、いくらも経たないうちに光文社文庫から復活するなんて、思ってもみませんでしたから……。短編集を含んだ全21巻が復活したってことは、それなりに人気もあったんでしょうか。いや、面白いんですけどね、特に本格ファンと、イギリス中世史のファンには。

さてどん尻にひけえしは、ポール・ドハティ。この人は、カー風の不可能犯罪ものが多いとあって、ワタクシ的には一番期待していた作家なのに、いつまで経っても翻訳が出なくて待ちこがれてました。昨年ようやく、早川のポケミスから『白薔薇と鎖』、創元推理文庫からは《修道士アセルスタン》シリーズの『毒杯の囀り』ってのが出て、今後も順調に続けばいいんですが……次がなかなか聞こえてきませんねえ。

早川のほうは、タイトルから想像つくように薔薇戦争の時代が舞台の密室もの。ファン・グーリッグの《ディー判事》シリーズの訳者さんが担当していて、とっても名調子なんですが、《密偵コーベット》シリーズあたりから始めたほうが、人気も出やすかったと思うんですけど(そうか!ドハティって、修道士と密偵の両方書いてるんだなあ)。《修道士アセルスタン》シリーズも密室が多いらしくて、待ちきれない私は洋書で一冊、“The House of Crows”ってのを取り寄せちゃいました。アセルスタンの愛猫、ボナヴェンチャーってのが可愛いんですが、読みにくいよう〜。早く訳してください。

ところで、歴史ミステリっていうと思い出すのが、ギリアン・リンスコットっていう作家。この人、初めて読んだ『推定殺人』っていうのが予想外に面白くて(この地味なタイトル、なんとかならんかったんですかね。原題は“Muder,I Presume”で、たぶんスタンレーがリヴィングストン博士に言ったセリフをもじったんだと思うけど)、注目してたんですが、いま手に入るのは講談社文庫の『姿なき殺人』一冊きり。それからもう四年も邦訳がありません。といって、『推定殺人』を出していたのは現代教養文庫。もう、絶版どころの話じゃない、出版社が消滅です。光文社、こっちも復活してくれないかなあ。カーのとある名作のオチと似てるんですけど、切れ味が抜群にいいんですよ。もし古書店で見かけることがあったら、ご一読をオススメします。

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