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zoom RSS 「ヒッチコック劇場」のこと。

<<   作成日時 : 2010/10/30 23:55   >>

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前回に引き続き、「ヒッチコック劇場」の原作や脚本などについて、もう少し書いてみたいと思います。主として、ミステリファン向けの内容です。

実は、現在AXNミステリーが使っている「ヒッチコック劇場」というタイトルには、少し問題があります。というのは、ヒッチコックがプレゼンターとして登場する番組は二種類あるからです。ひとつは原題が“Alfred Hitchcock Presents”、もうひとつは“The Alfred Hitchcock Hour”となっています。前者は30分番組で、1955年から1961年にかけて、全7シーズン268エピソードが制作され、これが日本で放映されたときのタイトルが「ヒッチコック劇場」なのです。

で、一時間番組となった“The Alfred Hitchcock Hour”のほうは、1962年から1964年まで3シーズン93エピソードが制作されていますが、日本ではシーズン2までしか放映されていません。そして、このときの邦題は「ヒッチコック劇場」ではなく、「ヒチコック・サスペンス」(ヒッチではなくヒチ)でした。さらにややこしいことに、ヒッチコックが亡くなった5年後、アメリカではカラーの新番組として“Alfred Hitchcock Presents”のタイトルが復活し、これも日本で放映されているんですが、この時のタイトルは「新ヒッチコック劇場」でした。ヒッチ監督が死んでるのに、どうしてカラーで再登場できたのかというと、当時よくあったコンピュータ彩色によるものでした。

というわけで、いまAXNミステリーが放送しているものは、本来は「ヒチコック・サスペンス」の邦題が正しいはずなんです。まあ、ヒッチ監督がプレゼンをするところも同じなら、あのテーマ音楽“マリオネットの葬送行進曲”も共通ですから、どうでも良いようなことだと言われそうですが、オールドファンには誤解を招いてしまうんじゃないか、というのが少し心配な点です。ちなみに、あのテーマ曲を番組オリジナルのものと思われている方は多いようですが、原曲はフランスの作曲家シャルル・グノーのピアノ独奏曲です(ウィキペディアでは管弦楽曲となっていますが、誤りです)。

さて、前回のエントリーで書きましたように、何と47年ぶりの放映となったシーズン2はこのまま全エピソードを放送してくれそうなんですが、海外のサイトでも「傑作揃い」と評価が高いシーズン3については、もともと国内未放映だということもあり、AXNミステリーが取り上げてくれるのかどうかはかなり微妙です。しかし、例えば「奇術探偵ジョナサン・クリーク」のように、国内未放映の番組を字幕で次々に紹介してくれたAXNミステリーのことですから、シーズン2の視聴率が高ければ、充分可能性はあると思うのです。

そこで、数多くのミステリ作家たちが原作者として名を連ねていることにもっと注目していただき、単にドラマとして楽しむだけでなく、ミステリ作品の上質な映像化が多く含まれていることを再認識していただければ、と思ったわけです。もちろん、この番組にもオリジナル脚本による話はいくつかあるんですが、何らかの形でミステリ作家が関わっているエピソードのほうが圧倒的に多く、ここでその顔ぶれをご紹介しておくのも無駄ではないだろうと思います。

“Alfred Hitchcock Presents”の脚本・原作者リストで目立つのは『あなたに似た人』のロアルド・ダールと、『歯と爪』のビル・S・バリンジャーですが、途中からヘンリイ・スレッサーやロバート・ブロック、スタンリイ・エリンなどが加わり、特にスレッサーは大車輪の活躍ぶりを見せます。また、最終シーズンからは「刑事コロンボ」でおなじみのリチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンクの名コンビが参加します。それが、一時間枠となってからの体制の変化にもつながったようで、ダールやバリンジャーは姿を消し、スレッサーとブロックの比重が相対的に上がります。ヒッチ監督のお気に入りだったロバート・アーサー(『五十一番目の密室』の作者)も早くから関わっていますが、意外なことにあまり担当本数は多くありません。

ちょっと煩雑になりますので、ここからはシーズン2の第5話なら「2-5」というふうに略させていただきます。スレッサーの原作が使われているのは1-6、2-5、2-7、2-22、2-28、2-30の6エピソードで、いずれも邦訳があります。シーズン3になると、なぜかスレッサーは表舞台から降り、ブロックの活躍が目立つようになります。そのブロックは、原作者としてクレジットされているのは2-1、2-27、3-3、3-14の4エピソードですが、他の作家の作品を脚本化するケースが多く、中でも「太陽がいっぱい」のパトリシア・ハイスミスによる1-7、エドワード・D・ホックの「冬の逃避行」を映像化した最終話3-29が注目されます。ちなみに、この最終話の監督は「エクソシスト」のウィリアム・フリードキンです。

早川書房のポケミスのラインナップが原作になっているものとしては、『野獣死すべし』のニコラス・ブレイクによる1-18『くもの巣』、ジュリアン・シモンズの1-15「二月三十一日」(脚本はリチャード・マシスン)、修道士カドフェルの作者エリス・ピーターズの1-27『死と陽気な女』、パトリック・クェンティンの名短篇集『金庫と老婆』の表題作2-25といったところが並んでおり、創元推理文庫からはコーネル・ウールリッチの1-9『黒いカーテン』や、マーガレット・ミラーの2-21『狙った獣』という、知名度の高い名作が取り上げられています。

ミステリ作家だけでなく、ファンタジーやSF系作家による原作もいくつかあり、シーリア・フレムリンの1-23、レイ・ブラッドベリの2-17および3-4、ハーラン・エリスンの3-10、ジョン・ウィンダムの3-11などのほか、中には古典的名作であるH・G・ウェルズの2-13『魔法の店』(しかも脚本はジョン・コリア!)やW・W・ジェイコブズの3-26『猿の手』が含まれています(これ、ものすごく見てみたい……)。

このほか、『下宿人』のベロック・ローンズ(1-16)、トラヴィス・マッギーの作者ジョン・D・マクドナルド(1-12)、最近『カーデュラ探偵社』が出たジャック・リッチー(2-20と2-26)、『物しか書けなかった物書き』のロバート・トゥーイ(2-6と3-21)、『薪小屋の秘密』の女性作家アントニー・ギルバート(2-4)、『大時計』(映画「追いつめられて」の原作)のケネス・フィアリング(2-12)、さらにはアンドリュウ・ガーヴ(1-3と1-8)、デイヴィス・グラッブ(3-1と3-13)、ジェイムズ・ヤッフェ(3-16)、C・B・ギルフォード(3-6)、植草甚一さんの好きだったエセル・リナ・ホワイト(3-17)、近々短篇集『エステルハージ博士の事件簿』が出る予定のアヴラム・デヴィッドスン(3-22)などなど、本当に多士済々です。

もう放映が終わってしまったシーズン1の中でのオススメは、ヒッチコック監督が映画化に執着していたと言われる作家ヘンリイ・セシルの原作による「ひき逃げを見た」(1-4)と、「刑事コロンボ」の原型とも言えるレヴィンソン&リンクの「身上相談」(1-30)。前者は脚本担当がスレッサーなのもポイントですが、本職の法律家にして北村薫が“創元推理文庫最強”と絶賛する『メルトン先生の犯罪学演習』の作者だけあって、ミスディレクションの鮮やかさはナンバーワンだと思います。後者は、コロンボが登場しさえすれば、そのまんまコロンボものになりそうなお話です。しかも犯人役が「バークにまかせろ」のジーン・バリーで、彼はコロンボのパイロット版だった『殺人処方箋』の犯人役でもあります。

……というわけで、いかがでしょうか。観たくなりませんか、「ヒッチコック劇場」。シーズン3放映への機運を高めるためにも、ぜひぜひご覧になってくださるよう、ミステリファンのみなさまに、切なるお願いをしたいと思います。

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